藤子・F・不二雄が1976年に『マンガ少年』9月号で発表したSF短編漫画『みどりの守り神』。
飛行機事故に遭った少女・深見みどりが、植物に覆われた未来の世界をさまようサバイバルストーリーで、植物が“守り神”的に奇跡を起こすファンタジックかつ深い物語です。
本が好きであまり周りと交わりたがらない友達に、藤子F不二雄さんの短編集を貸したら「私は緑の守り神が良かった」と言われ、貸して良かったとか思ったりして
— おむらいす (@pomupomu20trees) August 8, 2025
みどりの守り神【藤子・F・不二雄】ネタバレ考察!あらすじ
物語の幕開けは、高校生の少女・みどりが両親と共に飛行機で旅行に向かう場面から始まります。
しかし、その旅路は突如として墜落事故により一変!
目を覚ましたみどりの目の前に広がっていたのは、雪山ではなく、真夏のような熱気に包まれた濃密なジャングルでした。
生き残ったのは、彼女と偶然居合わせた坂口五郎という男性の2人だけ…
助けを求め山を下るものの、彼らの周囲では常識を超えた不思議な出来事が次々と起こります。
みどりが負った足の傷は、一晩で緑色の苔に覆われ、跡形もなく治癒。
空腹を感じれば、まるで誰かが差し出したかのように木の実が現れ、川に流され溺れそうになれば、意思を持つかのようなツタが救い上げてくれる。
奇妙な体験を重ねながら歩み続けた二人が辿り着いたのは、緑に呑み込まれた東京の姿でした。
高層ビル群は蔦や樹木に覆われ、都市全体が廃墟の森と化していたのです。
その中で坂口が手にした一枚の古い新聞。そこに記されていたのは、この世界の終焉を告げる恐るべき真実でした。
ある国が開発した細菌兵器が流出し、人間だけでなく動物や昆虫までも地球上から消し去ってしまった。
絶望的な現実に打ちのめされた坂口は錯乱し、悲鳴を上げながらみどりの前から姿を消してしまいます。
孤独の中で家を見つけたみどり。
しかし、その寂しさと絶望に耐えきれず命を絶とうと決意してしまうのです。
みどりの守り神【藤子・F・不二雄】ネタバレ考察!最後の結末の意味や感想も紹介!
みどりが命を絶つことを試みた後の意識回復時、謎の男性・白河貴志が隣で付き添っていました。
それのは運命的な出会いでした。
傷が「みどりのカビ」という不思議な力で治癒していきます。
実は、白河も過去に雪崩事故でこのカビに命を救われた経験があり、長い時間の経過と植物の驚異的な進化について説明してくれます。
植物が動物との共生関係を維持するために、生命を再生させる能力を獲得したというのです。
具体的には、二酸化炭素と酸素の循環が断たれた世界で、植物たちが動物を生命のパートナーとして蘇らせるというもの。
白河とみどりが新天地を求めて北へ向かいます。
絶望に支配されていた坂口とは真逆の、理知的で前向きな白河の姿がそこにはありました。
鳥たちの姿は動物界の復活を暗示しており、地球の生命循環が新たなステージに入ったことを物語っているように感じられます。
坂口でさえ、いつかはこの新しい世界で再生のチャンスを得られるかもしれない、そんな希望を抱かせるエンディングでした。
文明が崩壊した極限状態では、登場人物の坂口は恐怖と絶望から理性を失い、醜い本性を露わにします。
一方で、みどりのように、孤独や絶望の中でも優しさや希望を持ち続けようとする姿は憧れを抱きました。
まとめ
この物語は、人間が科学の力で自らを滅ぼし、破滅的な世界を作り出した姿を鋭く描いています。
人間は地球の支配者であるかのように振る舞い、自然を破壊し続けますが、最終的には植物が自らの意志で再生を促すという立場逆転の結末を迎えます。
これは、人間が自然を管理しているのではなく、自然と人間は対等な命のパートナーであるという、重要なメッセージを私たちに投げかけているような漫画でした。
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